ある晴れた日曜日の午後、田中さんは庭に古い網戸を運び出しました。長年使い込まれて真っ黒に汚れ、一部が破れてしまっていた網戸を、自分の手で張り替えてみようと思い立ったのです。その様子を興味深そうに眺めていたのは、小学生の息子でした。普段はゲームに夢中の息子が「何してるの?」と近寄ってきたことから、予期せぬ共同作業が始まりました。まず古いゴムをマイナスドライバーで引き抜く作業を息子に任せてみると、彼は宝探しでもするかのような真剣な表情でスルスルとゴムを剥がしていきました。古い網が外れてサッシだけになった時、息子は「網がないとただの枠なんだね」と驚いた声を上げました。次に二人で協力してサッシの汚れを水で洗い流しました。泥汚れが落ちてアルミの輝きが戻っていく様子に、親子で小さな達成感を共有しました。新しい網を広げ、田中さんがクリップで固定し、息子がゴムを溝に乗せていく。田中さんが専用ローラーを慎重に転がして網を固定していく様子を、息子は息を呑んで見守っていました。時折、網が曲がっていないか遠くから確認する役目を息子に与えると、彼はプロの助手のような顔つきで指示を出してくれました。最後のはみ出した網をカッターで切り落とす場面では、田中さんの手元に全神経を集中させ、切り落とされた網の破片を息子が丁寧に拾い集めました。完成した網戸を窓枠に戻し、スッとスライドさせてみた瞬間、二人は顔を見合わせて笑いました。そこには、今まで以上にクリアに見える庭の景色と、心地よい風が吹き抜けていました。息子は「僕たちがやった網戸、すごく綺麗だね」と嬉しそうに言い、その後も何度も網戸を開け閉めして感触を確かめていました。単なる家の修繕作業が、親子の絆を深める特別な時間へと変わった瞬間でした。自分の住まいを自分たちの手で手入れする。その価値は費用の節約だけでなく、家への愛着を育み、家族との豊かな思い出を作るという点にあるのかもしれません。田中さんは、来週は残りの網戸も息子と一緒にやろうと心に決めました。